緊急事態宣言の発令により、楽しみにしていた熊本のレース 阿蘇ラウンドトレイル(ART)が中止になってしまった。
https://universal-field.com/event/asoroundtrail/都知事曰く、3密を避けて。不要不急の越境しないで。
オッケー、オッケー。俺もいい大人、ルールは守る。東京を出ないで一人で遊べばいいんでしょ?
という事で(笑)、以前から暖めていた企画、都県境の山間部を繋ぐトレイルにソロでアタックしてみることにした。
題して、東京ラウンドトレイル(TRT)
※ちなみに元ネタはこちら。

ARTが約120kに対し、TRTは90kほど。距離的には3/4だけど、エイドが無かったり、一人だったりすることを考えれば、あまりノンビリしている余裕は無さそうなので、装備も本戦よろしくトレランスタイルで挑むことに。
また、ラウンドトレイルとは言ったものの、本トレイルは縦走コース。では青梅と高尾、どっちからスタートするか。
これは悩まず青梅スタートに決定。理由は2つ。
1つ目はトレイルの難易度。累積も歩きやすさも青梅より高尾の方がイージー。であれば段々楽になる方が良いはず。
2つ目はゴールエリアの充実度。決して栄えているとは言い難い青梅(失礼!)に比べて、高尾はミシュラン3ツ星の観光地。ゴール後の快適さは比べるまでもないはず。疲れた体を駅前の極楽湯で癒して、缶ビールを飲みながら帰るなんて最高じゃないか!(前フリ...)
という事で、本当ならART開催日だったはずの土曜日。俺は始発で青梅へと向かった。
7:30 東青梅からバスに乗り換え、スタート地点となる青梅の安楽寺に到着。

7:40 トレイルヘッドから成木尾根に取り付く。「都県境」の表示が嬉しい♪

成木尾根は山と高原地図には無いルート。荒れ具合を心配していたけど、やはり都県境のプレミアムがあるのか、それなりに歩かれているっぽくてトレイルは明瞭。

看板もあった。

すげー!都県境って有刺鉄線と鉄格子で遮られてるんだ!

なーんて思ったらゴルフ場だった。そりゃそうか。脱藩するわけじゃあるまいし。

都県境の標識となる赤杭を辿っていく。


これ絶対後付けでしょw

奥武蔵ロングトレイルの標識。これも近いうちにやるんだろうな~

フカフカのトレイルや、

藪を漕ぎつつ

10:20 小沢峠

ここからは山と高原地図ルート

メジャールートになった途端、映えるトレイルにw

棒ノ折山方面へ

11:41 棒ノ折山(棒ノ嶺)は結構な賑わい。

なのでピークの写真だけ撮って、サクッと通過。

尾根の北と南で植生が違って面白い。

日向沢ノ峯

気持ちの良いトレイル

13:45 蕎麦粒山

眺望が開けた。

14:32 一杯水避難小屋には先客が2名。今日はここに泊まるとのこと。確かにここでノンビリしたら最高なんだろうな~

思わず羨ましくなる気持ちを振り払い、先へ進む。
尾根から少し標高を下げた斜面を、トラバースしていく。

ガスが出てきた。

みるみるトレイルが幻想的になっていく。

15:49 酉谷避難小屋

水は弱いけど出てた。大切に汲ませていただく。

ヘリポートを通過し、

大好きな長沢背稜へ

この山っ気タップリな感じが最高。

17:53 芋ノ木ドッケ

日が落ちてきた。

雲取山が見えた!

18:11 大ダワ

男坂をよじ登り、

テントの花道を抜けると、

18:26 雲取山荘到着。

カップヌードルと炭酸最高♪

19:00 東京都最高峰ゲット!

夕闇の石尾根。楽しいナイトクルージングの始まり。

ヘッドライトの光を追いかけながら進む。

19:47 七ッ石山は闇の中...

それでは下山開始。

BGMはショパンのワルツ。
軽快な3拍子に乗せて、走りやすいトレイルを一気に下っていく。
21:00 鴨沢に下山。

ここまでの走行距離は約60k。レースならドロップバックが置かれる距離。
やれやれ...、とイヤホンを外した途端に訪れる静寂。自分の荒い息と足音だけがやけに大きく聞こえる。
改めてこれがレースじゃない事に気づかされる。
よし行こう。
次はハセツネエリアだ。
深山橋で奥多摩湖を渡る。ここからしばらくは未踏のルート。

異世界へ続きそうなトレイルヘッドから入山。

目指すはお馴染みの三頭山。

ピークまでは約5kで1000mアップのバーティカル。
流石に疲れ始めた身体を、ダブルストックで必死に持ち上げていく。
23:39 三頭山

すっかり重くなった足取りでヨタヨタと進んでいると、三頭山避難小屋!

これは神の助け。少し休ませてもらおうと扉に近づくと、中からは気持ちよさそうなイビキの爆音が聞こえてくる。
流石にこの時間に安眠の邪魔をするわけにはいかないので、風除室で補給だけさせてもらい、先へ進むことに。
ルートはハセツネコースを逆走していく。


ただやはり疲れと睡魔で、どうにもスピードが上がらない。
2:46 浅間峠

ちょうど東屋があったので、ベンチに座りこむ。

気温は10°を超えるくらい。風さえ遮れば仮眠には何の問題もない。

ダウンとレインを着込んで、横になったらアッという間に意識が飛んだ。
約1時間寝たら大分すっきりしたので、再び行動開始。
空が明るくなってきた。

林間から朝日が差し込む。

5:42 醍醐丸。三頭山から6時間もかかっちゃった...

ハセツネコースとはここでお別れし、和田峠に向けて下っていく。



6:03 和田峠。いよいよここからはラストステージの高尾エリア。

新しいステージの始まりは、いつだって上り坂...

6:20 陣馬山。10代くんは今日も元気。

ここでGPSを確認すると、走行距離は既に87k。あれ、このコースって90kじゃ無かったっけ...
なーんて凹んでても残念ながらゴールは近づかない。近づく方法はただ一つ。それは自分の足で進むこと。

ただし、巻けるルートはガンガン巻いていくw

7:30 景信山。絶景!


小仏峠を経由して

8:00 小仏城山

天狗様はご不在。寂しい...

ここまで来れば、ほぼゴールしたようなもの。
開店準備中の売店で飲み物を補給し、残っていた行動食を食べきる。

ほぼゴールなら、逆にもう高尾山口に下山してもいいんじゃない?という悪魔の囁きを振り払い、大垂水へと降りていく。
何故なら都境の尾根道はまだ続いて(しまって)いる。
最後の尾根に取り付く。

ここからは、過去の記憶では下り基調のフラットだったはずなんだけど、たまに表れる登りがやけに辛い。
ゴールを意識しちゃったからか、走っても走っても距離が縮まらない。
くそー、やっぱりさっき降りとけば良かった...、と大後悔しながらヨロヨロと走っていると、「星野さん!」と俺を呼ぶ声が。
!!
なんとランボーズのチームメイト達に遭遇!
ちょうど高尾に自主練に来ていたらしい。
しかも、SNSを通じて、俺が青梅から走ってきていることも知っていたらしく、「すごいですねー!」「さすがですねー!」と超チヤホヤしてくれた♪
いやー、城山で下山しなくて本当に良かったw
美女軍団の歓待にすっかり元気を取り戻し、ラストスパート!


10:14 最後のピーク、草戸山

お風呂とビールまで、あと300m!

11:00 高尾山口駅に無事ゴール!!

汗でドロドロの身体とカラカラの喉を癒しに駅に併設の温浴施設に駆けこむ!
はずだったのだけれど...
..._| ̄|○

仕方ないのでトイレで身体を拭いて着替えたらそれなりにサッパリ。
都県境を見事になぞった走行履歴をニヤニヤ眺めながら帰宅。

「制限があった方が人間の創造性は高まる。」
そんな研究結果があるらしい。
実験によれば、目の前に障害物があった方が大局的な視点が優位に発揮され、知覚的、概念的な視野が広がったという。
もちろんレースが中止になったり、会いたい人に会えないことは残念だけど、だからこそ出来ることや見える景色は沢山あるはずだ。
イギリスの作家 チェスタートンは「絵画の本質は額縁にあり。」と言った。
コロナによって変容した様々な社会ルールやマナーを、制限や制約といった自分たちを縛る鎖ではなく、単なる額縁だと捉えれば。
その中に何を描くかは、俺たちの自由だ。
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- 2021/05/23(日) 09:05:36|
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最後の御朱印を頂き、納経所を出ると、すれ違いで遍路装束の方が一人、入っていく。
ガラス越しに見ていると、どうやら参拝の説明を受けている様子。
そうか、これから廻るのか...。
少し緊張した面持ちで説明を聞いているその方が、何だか少し羨ましくなる。
ほのかに線香が香る境内を出口へ向かって歩く。頭の中を様々な想い出が駆け巡る。
仁王門をくぐり、外界へ一歩踏み出した瞬間、身体にまとっていた何かがフワリと落ちた。
何だかそんな気がした。
*****
もう、歩きにこだわる必要はないため、最寄り駅に移動する。

3週間ぶりの公共交通機関。

車窓を流れる景色の速さに、日常に帰ってきた実感がジワジワと湧いてくる。

徳島駅まで移動して、予約していた「ホテル越久」にチェックイン。

駅からは少し離れているけど、人口ラジウム温泉があるのがセレクトポイント。
もう明日の足のことを気にする必要はない。久しぶりにゆっくりとお風呂に浸かる。あ~、極楽。
身も心もサッパリしたところで、フロントの方に教えていただいた近隣の居酒屋さんに突撃。

感慨無量...

としみじみしたのは最初だけ。もうお酒も遠慮はいらないw
SNSを立ち上げ、毎日の進捗報告の投稿に頂いたコメントに返信していく。
※巡拝中は、やり取りしちゃうと里心が付いちゃいそうで控えさせて頂いてました。本当に不義理でスイマセンでした。
旅を振り返りながら、皆と会話しているようで、どんどん楽しくなる。
徳島の幸はどれも美味しく、スダチ杯がとまらない。

〆は徳島ラーメン。

やはり一周くらいじゃ菩提や涅槃の域には達しないw
1/23当初の予定では、妻と高野山にお礼参りに行くつもりだったけど、緊急事態宣言が発出されたので、それは解除後のお楽しみ。
久しぶりの痛飲で、まんまと二日酔い...。でも朝ごはん付きの宿泊プランだったので、意地で食べる。

外は生憎の土砂降り。まー、昨日じゃ無くて良かった。もう移動手段の制約は無い。

という事であっさりとタクシーを召喚し、一路空港へ。

発心の心も、修行の精神も完全に薄れてきているw
*****
飛行機が飛び立つ。
旋回しながら上昇する窓に、雨に煙る広大な大地がスクロールしていく。
歩き続け、祈り続けた四つの道場。結局、そのどれにも至れなかったな。
昨晩からの自分を思い出し、また自嘲する。
気分を変えたくて、長かった旅の写真を見返す。
旅の初めからスライドしていった手が、最後の札所で撮った2ショットで止まる。

突然、万感の思いが込み上げる。
「ありがとうございました。必ずまた来ます。」
遠くでお遍路の区切りを告げる鐘の音が、聞こえた気がした。
-まとめ-
【行程】

・総距離は1,130km。ただ今回、GPS時計を持って行かなかったため、毎日の距離は黄色本の表示の合計。なので、食事や宿泊のための寄り道や道を間違えて戻ったりした分は含まれていない。とは言え、それも一日数キロってレベルだとは思うので、実際の距離としてはプラス20~30kmってとこだと思う。
・期間は終わってみれば予定どおり。途中で緊急事態宣言が発出されたことで、高野山へのお礼参りを延期したため、日数的には延ばすことも可能だったけど、何となくこだわり続けた。
・体調的には足が痛み始めた高知が一番辛かった。ただ愛媛で荷物を軽量化してからは、ほぼ低位安定。最後の香川では、残距離から逆算した一日あたりの距離が短くなったこともあり、かなり余裕を持ちながら進めた。
気候の良い時に最初からミニマム装備で行けば、各道場でそれぞれ一日は短縮できるイメージはある。ただしお遍路はFKTではない。むしろ今回、日数にこだわり過ぎたために、各札所や遍路道沿いの魅力的または歴史的なスポットをいくつかスルーしてしまった。またコロナ禍が無ければ、道中の一期一会はもっと多く、深くあったのだとも思う。
次回、行く際には期間から逆算するのではなく、事前にもう少ししっかりと調べた上で、行きたい場所や見たいもの、やりたい事から積み上げた行程を組むようにしたい。
【宿泊/装備】
・今回の季節、行程的には概ね適切だったと思う。コロナ影響による「万が一」に備えてテントも持ったが、実際は無くても旅は可能だったと思う。ただそれはあくまでも結果として。予期せぬ天候の悪化や、県独自の非常事態宣言等、危うい状況には何度もなったため、最悪でも野宿はできるヤドカリスタイルだったことが心のセーフティーネットになった。
一方、コロナに関わらず、全てをテン泊で進む旅にも憧れる。海外のロング・ディスタンス・ハイキングのように、生活用具一式をバックパックに詰めて、お腹がすいたら火を焚いて料理を作り、疲れたらテントを張って眠る。空の色、風の音、海の香りを全身で感じながら、自分や弘法大師様との対話に没入する。ひょっとすると、本来の遍路道の歩き方としては、その方がよりオリジンに近いのかもしれない。
【参拝】
・各札所での参拝はお遍路の醍醐味と言っても過言ではない。作法に則り、一箇所一箇所丁寧に参拝し、納経帳に御朱印を頂く。初めはたどたどしかった読経も、だんだん口が覚え、読みながらそれぞれのお経の意味をボンヤリと考えるようになる。そしていつしか観念的だった「祈り」は、唯物論的な「手触り」として感触を伴うようになった。
当初は不明瞭な概念に過ぎなかったものが、歩き続けることで精神的にも肉体的にも研ぎ澄まされ、祈ることで具現化していく。そのプロセスこそが、手段としてのお遍路の本質なのだと思う
【お遍路の目的】
・なぜお遍路を歩くのか?
一番札所を出る時に一旦棚上げした疑問を、結願そして満願成就した自分に改めて問いかける。
答えは、やはり考えるためだった、という事になるのだと思う。より正確には、考えざるを得なかったと言うべきか。
ここまで、この長い長いブログにツラツラと書いてきたとおり、心や身体の状況は、外面的には、時間や距離の経過そして天候や体調の良し悪しによって日々変化した。一方で、歩き、祈るというシンプルな単純行為を繰り返すことで、その内面的なポジションは、ほぼ定位置で安定していたような気がしている。
川の流れに漂うだけだった木の枝が、川底にささり止まることで水の抵抗を感じるように、俺は自我を覚知し、思考した。
・では、何を考えたのか?
一つは「どう生きるか」という事。
旅の途中には辛いことや苦しいことが沢山あった。そして同じだけの嬉しいことや楽しいこともあった。冷たい雨が美しい虹をかけるように、明確に因果関係があるものもあれば、ご利益としか思えないこともあった。しかしそれらは、結局のところ、一本のレールで繋がっていた。それはまるで、スイッチもスキップもせずに必ず停まっていく鈍行列車の駅のように。
当たり前だけど、人生において2つのレールを同時に走ることはできない。そしてそこで起きることが必ずしも相関しないのなら、今からの延長線上で想像する未来に大した意味はない。だったら、なりたい自分、あるべき世界からバックキャストした今にフォーカスしよう。明日のために功徳を積むのではなく、今日の幸せを求めよう。
「この身、今生に向って渡せずんば、さらにいずれの生に向かってか、この身を渡せん。」
未来に縛られない今を生きよう。
もう一つは「何のために生きるか」という事。
近年、俺は、自分が働く、更に言えば生きる目的を「自己実現」と「社会貢献」のためだと思っていた。つまり俺にとって「自己」と「社会」は自分のオフィスと共用部、自宅の敷地と公道のようにハッキリと区分された「内」と「外」であり、自己実現と社会貢献はあくまでも車の両輪だった。でも、今回の旅を通じて、その壁や境界線はどんどん低く、薄くなっていった。
お遍路における接待とは、単なる応援だけではなく、自分に代わって厳しい修行をするお遍路さんへの感謝の気持ちでもあるという。また巡拝者も読経の最後に回向文を唱え、自らの功徳を人々と分かち合うことを祈る。自分のためが人のため、人のためが自分のため。この世界において、個人と社会が両立するものでは無く一体だとすれば、自己実現と社会貢献も両輪ではなく、一つのエンジンだ。
自分の喜びや楽しみを社会のために追求し、社会の苦しみや悲しみを自分のために解決する。それが俺の生きる意味だ。
お遍路とは、歩くことで思考し、祈ることでそれを具現化すること。
そして具現化された思考とは、自分の溶け込んだ世界のために今を全力で生きること。
俺にとって、今回のお遍路を端的に言語化すれば、そういうことだったんだと思う。
遍路道を歩く。
見上げた空には雲が浮かんでいる。
風が強まり、ゆっくりと形を変えながら雲が流れる。
あとには「空」だけが残っている。
海岸に出た。
水面に波が立っている。
寄せては返す波はいつから波になり、いつから海に戻るのだろう。
いや、きっと全ては「海」なのだ。
お遍路の祖が名乗った名前。
その意味が少しわかったような気がした。
(了)
- 2021/02/28(日) 11:00:31|
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「涅槃」
一切の煩悩から解放されること。
1/19(十八日目)起きたら何と7:00。
次の札所は歩いても10分ほどの場所にあるため、いつもよりだいぶ遅い6:00頃起きればいーやと目覚ましをかけなかったら、まんまと寝過ごした...。
昨夜、思考の渦に溺れたからか。はたまた単なる油断か。
でも、まー寝坊しちゃったものはしょうがない。
昨夜、ゴールから逆算したところによれば、幸い今日からは大分行程が楽になる予定。自分との体話、弘法大師様との対話を丁寧に、そして楽しみながら思考の渦を泳いでいってみよう。
昨日、お接待で頂いたバナナとコーヒーで、のんびり朝ごはん

7:47 久しぶりに明るくなってからの出発


学生たちは今日も爽やか。

8:07 ここは同一敷地内に2つの札所がある2枚抜きポイント♪

仁王門をくぐると左右に別れる。

8:10 68番 神恵院


8:19 69番 観音寺


納経所は共通。同じ僧侶が2箇所分をサラサラと記帳してくれた。

川沿いの遍路道を、ジョグペースで次の札所に向かう。天気も心も穏やかで気持ち良い。

9:26 70番 本山寺

境内には立派な五重塔があった。

うどん県の副知事に誘われ

10:10 記念すべき香川1杯目の「将八うどん」


かけ小250円也。

なぜ「小」にしたかというと...
10:53 すぐに次のうどん屋さんに入るからw

「手打ちうどん 渡辺」名物の天ぷらうどん。キレイな「羽」を透き通った出汁に崩しながら食べる。

夢中でうどんをすすっていると、カウンターの向こうでうどんを打っていたご主人が手を止めてこっちに来た。
何かと思い顔を上げると、「寒い中、ご苦労様です。お弁当にどうぞ。」と、何とパックに入った炊き込みご飯を頂く。
「ありがとうございます!」思わず立ち上がって頭を下げる。
それどころか、食べ終わってお会計をしようとすると、レジにいたスタッフが「お代はお接待させて頂くよう店主から言われています。頑張ってください。」とのこと!
カウンターの奥のご主人に改めて深々と頭を下げる。お腹も胸も一杯になった。
仏像たちのファッションショーを愛でつつ、次の札所へ

12:18 71番 弥谷寺

弥谷山の中腹に建つこちらの札所は超立体的な配置になっていて、本堂までは600段近い階段を登らなければいけない。なので、境内にはマイクロバスの送迎(有料)がある。
ちなみにそのバスがこちら! ナンバーまで「88」の完全お遍路仕様

乗ってみたい気持ちをグッと抑えて階段へ...。

30分弱かけて登りきった、と思ったら大師堂にも最後の階段 靴を脱ぐのに座ったら、しばらく立ち上がれず、そのまま小休止

ただ、ここから77番の札所までは、札所間の距離が短いボーナスステージ。しかも77番から今日の宿泊予定である丸亀も3kmほどと至近。

よし、行こう。

13:23 72番 曼荼羅寺

13:40 73番 出釈迦寺 いやー近い♪

ちなみにここから1.5kmほど山道を登った捨身ケ獄には、弘法大師様が7歳の頃、「私は将来仏門に入り、仏の教えを広めて多くの人を救いたい。私の願いが叶うなら釈迦如来よ、姿を現したまえ。」と言って崖下に身を投げたところ、釈迦如来が舞い降りて受け止めたという伝説がある。
7才で何という意識の高さよ!と感服しつつ、46才のおじさんは軽やかに身をひるがえして次の札所へw

14:15 74番 甲山寺

15:15 75番 善通寺

空海生誕の場所と言われるこちらの札所は敷地がとても広く、境内は普通に近隣住民の生活導線になっている。

空海が生まれた1200年前から今に繋がる時間軸。そのどこをイメージするかで、この場所の重力は変わる。つい悠久の歴史に思いを馳せてしまい身体がどっぷりと重くなる。
いかん、いかん。慌てて脳内を現代まで早送りしてから歩き出す。
16:01 76番 金倉寺

境内には金ピカの大黒天様。小僧とのギャップに胸がザワつくw

16:38 77番 道隆寺

丸亀市に入った

朝の寝坊が大事に至らず、無事予定どおりの行程をこなせたことに一安心

17:32 丸亀駅

17:45 本日のお宿「ホテルアルファー1」

お接待で頂いた炊き込みご飯をありがたく頂いて、20時頃就寝。

参拝 68番~77番、距離 36.4km

40km弱で10ヶ所。距離と参拝数の割合が明らかにおかしいw 香川最高♪
1/20(十九日目)7:00 今日は確信犯的にのんびりと起床。なぜなら朝ごはん予定のうどん屋さんが8:30開店だからw
朝食前に、荷物切り離し作戦第二弾。万が一のビバークに備えて念のため持っていたシュラフカバーやマット、残日数や天気予報から不要と判断した衣類を自宅へ送る。

更に軽くなった荷物でウキウキと向かった先は
8:25 「麺処 綿谷」 食べログ3.76の人気店に開店と同時に飛び込む。

肉うどんハーフ 360円。美味い!

当然のようにハーフにしたのは、すぐ次のうどん屋さんに行くから♪ のはずだったんだけど...
8:57 ネットでは9:00だった「手打ちうどん 山とも」の開店は、行ってみたら9:30だった。

タモさんがブラタモリで香川にきた際、唯一食べたうどん屋さんということで楽しみにしていただけに残念...。
気を取り直して本日最初の札所へ。そうそう、俺の目的はこっちだった
9:16 78番 郷照寺

商店街を抜ける。さっき食べ損ねただけに、つい目的を見失い、うどん屋さんを探してしまうw

アンパンマンが道案内。やなせ先生が香川の出身なのかな~、って調べたら四国ではあったけど高知だった。

10:38 79番 天皇寺


のどかな田舎道の途中に

村上春樹さんも愛したという名店「がもううどん」

かけうどん小150円に各100円のゲソ天と温玉をトッピングして、外のテーブルで頂く。これは美味い!!

入ったときはたまたまタイミングが良かったらしく、食べ終わる頃にはこの行列。

12:04 80番 国分寺

札所も80番台に突入し、残すはいよいよ8箇所。残りの札所間の距離(と行きたいうどん屋さんの営業時間w)から、今日はここから25km先の温浴施設、明日は87番近接の民宿に泊まり、最終日に結願と満願を一気に成就してゴールする予定。
ここで今晩と明日の宿にまとめて電話をすると、それぞれ無事に予約できた!よし、これで四国ループのレールは完成した。後は俺が故障も脱輪もせずに進むだけ。
次の札所は山の上。

晴天の下、気持ちの良いトレイルを登っていく


ボトルが空になったため、自販機を探していると、向こうから来た車が俺の横で止まった。
ウィンドウが下がると、乗っていたのは老夫婦。旦那様の方が「ご苦労様、良かったら飲んで。」と言って、栄養ドリンクをくれた!

いやー、お遍路も80番台になるとご利益がすごい。「あると良いな」が瞬時に、しかも向こうからやってくる。
13:07 81番 白峯寺

仏像の前に、石の長椅子が並ぶ。観客が座ったら、ありがたい説法でも始まるのかな

喉の渇きが癒されると、今度はお腹が空いてくるのは世の常。すると...
ん?

失礼ながら寂れた外観から、最初、やっていないと思って通り過ぎようとした。
すると、引き止めるかのように店主のおばちゃんが出てきて看板のパトランプの電源を入れたので近づいてみると、ちょうど休憩時間が終わったと言う。
何?今日ってご利益の開放日なの?
店内に入り、暖かいストーブの横に陣取る。

うどんを頼み、アツアツのおでんをつまみながら、出来上がるのを待つ

卵とじうどん 450円。もちろん美味い。

ファイブスターレベルの遍路小屋(俺調べ)


15:30 82番 根香寺

お寺に奉納されているという怪獣は、鬼滅の刃のキャラっぽい。見たことないけど。

木々のトンネルを抜けると

高松の街が見えた

夕暮れの河川敷を、市街地の灯りに吸い寄せられるように走る

あと少し...

18:30 「天然温泉きらら」

同一の建物内に泊まるのかと思ってたら、隣接のマンションに案内される。当初リゾートマンションか保養所用途で開発されたものを、温浴施設の運営会社が買って1棟丸ごと宿泊棟に転用してるっぽい。



宿泊者であれば温泉は入り放題。ただ脚の炎症がひどくなると困るので、温泉にはサッと浸かるだけにして、後はひたすら水風呂でアイシング。
お食事処は混雑していたため、テイクアウトの惣菜セットとカレーを部屋で食べて、22時頃就寝。

参拝 78番~82番、距離39.9km
1/21(二十日目)7:00 83番 一宮寺

札所の開門に合わせてスタート。
今日も良い天気になりそう

高松市街は平日の朝

通勤や通学のためにたくさんの人や自転車、車が動いている。そんな日常風景と俺を分けているのは、ペラペラの白い布一枚だけ。そして、その非日常な日々ももうすぐ終わる。この白装束を脱いだ時、俺が戻る日常は、果たしてどんな世界なんだろう...。
そんなことをぼんやり考えていると、こんな看板が。

俺は、まだまだうどん気分♪
と、同時に思う。そうだよ、先のことは行ってみなきゃ分からない。それより現在進行中の今を充足させよう。弘法大師様が開いた真言宗も輪廻の先では無く、今生での悟り「即身成仏」を目指すのだから。少なくとも、最初に戻る日常にはこんなにたくさんの美味しいうどん屋さんは無いだろうし。
一気にスケールダウンした思考は、現世のうどん屋さんに無事着地w
8:41 「うどんバカ一代」

釜バター小490円。悟れる美味しさ♪

次の札所はあの山の上。

と、その前に、現世の幸せを追求する俺は、うどん屋さんに寄り道
9:55 「わら屋」


釜揚げうどん並470円、とり天620円。サクサクのとり天と、優しいお出汁で頂くアツアツのうどんがベストマッチ!

この像って、歩きスマホを増長させるから無くしたんじゃなかったっけ?

11:02 84番 屋島寺

続いては、運河を越えたあの山の上。数日前なら「うへ~」って感じだけど、今日は快晴でロードもトレイルも乾いている。何よりうどんパワーで元気いっぱい。


お約束のケーブルカーはスルー

弘法大師様に迎えられ、

12:37 85番 八栗寺

これが恐らくこの旅最後の海岸線

平賀源内生誕の地があった

13:51 86番 志度寺

納経所でお接待を頂く

時間的にはだいぶ余裕があるため、ポリポリ食べながらノンビリと歩く。
次の札所、そしてとうとう88番 大窪寺の看板が出た!

今日のゴールまでは残り僅か。

15:55 87番 長尾寺

今宵の宿は、札所の目の前の「民宿 ながお路」


宿泊客は今日も俺一人

お風呂に入り、近くのコンビニで買った夕食を食べたら、今日の行程と写真をSNSに上げる。
==========
お遍路 20日目
参拝 83番〜87番、距離 33.2k
結願イブ。
自分のFBを見て旅を振り返る。
徳島では完全に浮かれてる。高知ではあちこち痛めたり、雪が降ったり大変そう。愛媛に入りなんとかしようと靴を変えたり、荷物を減らしたり頑張ってる。香川ではうどんばっか食ってるw
辛いことや苦しいことはもちろん沢山あったけど、その度に多くの人に支えられ、助けられた。嬉しい出会いや美しい景色に何度も心を癒された。
そして、こんなオジさんの日々をオンラインで見守り、励ましてくれる家族や友人、仲間たちの想いが、前に進む元気と勇気をくれた。
自分のために始めたお遍路だけど、そんな皆の想いにも絶対に応えたい!と今は強く思っています。
明日は88番 大窪寺で結願し、そのまま1番の霊山寺にお礼参りして満願とすべく、スタートは深夜未明とする予定なので、今夜はそろそろ寝ます。
良い報告が出来るよう、明日は頑張ります。==========
今日まで毎日繰り返してきた〆のルーティンも、いよいよ最後だと思うと、ついついしんみり。
投稿した途端に付きはじめたリアクションやコメントに胸が熱くなる。
皆、本当にありがとう...。
1/22(二十一日目)4:30 最終日スタート


トレイルで夜明け




絶景の祝福

ラストピークを越える



8:06 88番 大窪寺


結願成就!

山門前の「八十八庵」で最後のうどん



さあ、帰ろう。


徳島に入る

カウントダウンが始まる

初日の宿「民宿寿」で無事の結願をご報告

3番 金泉寺

2番 極楽寺

そして...

15:52 1番 霊山寺



1200km、21日間におよぶ俺の巡礼の旅が、終わった。
- 2021/02/21(日) 11:51:50|
- お遍路
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1/16(十五日目)5:00 雨のスタート。
5:44 今治市に入る。

たこめしのオニギリで補給。これ美味い!

夜明けとともに雨はあがり

美しい虹をかけた

暗い夜ほど夜明けは美しい。雨が降らなければ虹は出ない。そういえば仏陀も苦行の果てに食べた乳粥が悟りに繋がったんだっけ。
その時は辛かったり苦しかったりすることも、嬉しいことや楽しいことへのプロセスだとすれば、全てのことに意味があるってことか。
何だか空がいつもより明るく感じる。

8:56 54番 延命寺

今治市街へ入る。レインを脱ぎ、ザックカバーも外す。
9:50 55番 南光坊

御朱印を頂き次に向かおうとすると、急に大粒の雨が。

しばらく待ってみたけど、一向に止む気配が無い。
これもプロセスか...。自分に言い聞かせながら、脱いだばかりのレインを着て、再びザックカバーを付けて、土砂降りの中へトボトボと歩き出す。
しまなみ海道の拠点となる今治駅には立派なサイクルステーションがあった

雨宿りも兼ねて、遍路道沿いにあったとんかつのチェーン店に逃げ込む
揚げたてのとんかつにソースとカラシをたっぷりとつけてかぶりつく。白米をガツガツかきこみ、熱い味噌汁で流し込む。身体中に活力が流れ込んでくる。

アッという間に食べ終わり、外に出ると晴れてる!

土砂降り→海老ヒレメンチ定食→快晴!
ナイスプロセス♪

11:15 56番 泰山寺

11:58 57番 栄福寺

次の札所は山の上

12:53 58番 仙遊寺
その名のとおり、昔、仙人が遊んでいたという言い伝えがある。遊具はその名残か!?


再び街へ下っていく。トレイルが乾いてさえいれば、もう足の痛みは気にならない。


電波が入ったところで、昨日、目星をつけた宿に連絡してみる。
次の札所である60番 横峰寺は、30km先で800mアップ。なので参拝は明日になるため、朝一で参拝できるように今日は残業して出来るだけ近づいておく作戦。ちょうど登り始める丹原の町にゲストハウスがあったため、そこを第一候補としていた。
黄色本に記載されている携帯番号を鳴らすと、でた!
「もしもし、お遍路をしているものですが、今日、1名、素泊まりで部屋は空いてますか?」
「ハイ、空いてますよ~」
第一関門クリア!続いて第二関門へ
「ちなみに東京からなんですけど...」
「あっ、そうなんですか...、だとすると...」
何だか不穏な空気がただよう。ドキドキしながら言葉を待つ。
「こんな状況なんで、県外からの方は、通し打ちで、始めてから2週間以上経っている方に限らせていただいてるんですけど...。」
「2週間前ってことは...」
「今日だと...えーっと、1月2日以前の出発ってことになってしまいますね...」
Wow!That very day!
「私、まさに1月2日に出発しました!!」
「あら、それは良かった!ではお待ちしていますね~♪」
無事、第二関門もクリア! フゥ...
14:24 59番 国分寺

握手をして一つだけ願い事を聞いてくれるお大師様

ちょっと悩んだけど、コロナの一刻も早い収束をお願い

一袋あった運ちゃんの黒飴もこれが最後の一個。何度も助けてくれて本当にありがとう。

暮れなずむ田園をラストスパート

17:55 ゲストハウスBEKKU到着

迎えてくれたのはオーナーの米子(よねこ)さん

リビングに通され、宿帳に記入しながらお話を伺う。
米子さんはずっと働いていた保険会社を2年前に定年した後、今治のホテルで受付のパートをしているらしい。昔から人と会ったり話したりするのが好きだったため、パート勤めになって時間が出来たのを機に、ご主人に頼んでご自宅を改装し、昨年から民泊を始めたとのこと。
「これからお食事ならご相伴させて頂いて良いかしら?」
もちろんです!
お風呂に入って、エアー乾杯!

久しぶりの人との会話。お遍路のこと、転職のこと、民泊のこと、そしてコロナのこと。
話し上手、聞き上手な米子さんとの時間は楽しく、瞬く間に過ぎていく。
お遍路の魅力として必ず挙げられるお遍路さん同士や地元の方との一期一会。
こんな時期だから...と諦めていただけに、一層忘れられない夜になった。
いつか必ず再訪することを約束して、21:00頃就寝。
参拝 54番~59番、距離 59.6km
1/17(十六日目)5:00 まずは標高800mの山登り。トレイルに入る頃に夜が明けるよう、逆算してスタート。

遍路道は妙谷川に沿って標高を上げていく。黄色本によると、増水時には通行できなくなる場合があるため、川下で流水量を確認し、川底や岩が見えれば大丈夫とのこと。
オッケー、川底が見える。

6:30 トレイルに入る

それを待っていたかのように空が明るくなってくる

我ながら完璧なタイムマネジメント


7:41 60番 横峰寺

標高が高いため、境内には雪が溶け残る

納経所で最中のお接待♪

それでは下ります

おう!頑張る!

快適なトレイルは

いつしか舗装路に変わり

10:11 61番 香園時

近代的な建物の中に靴を脱いで参拝


ここからは札所が近接する
10:27 62番 宝寿寺

10:53 63番 吉祥寺

すっかり日常風景となった柑橘畑

12:15 64番 前神寺 テンポよく参拝するあまり仁王門で写真を取り忘れたため、バックショット

西日本最高峰の石槌山は、今回はスルー

強い追い風が背中を押してくれる

高松、そしてゴールの徳島の表示が出た!

17:33 ギリギリ明るいうちに今日のお宿「松屋旅館」にチェックイン

近くのスーパーに買い物にいったら、嬉しいことにタイムセールが始まっていたため、ここぞとばかりに買い漁るw

明日はいよいよ香川に入る。
空海生誕の地であり、最後の道場となる讃岐の国へ思いを馳せつつ、20:30頃就寝。
参拝 60番~64番、距離 54.1km
1/18(十七日目)6:00 今日も暗闇のスタート


煙が棚引くコンビナートを離れ

65番 三角寺へ登っていく

あそこから来た

そしてトレイルへ

7:54 65番 三角寺

桜が咲いてる!

納経所で聞いたら、これは四季桜といって、年に2回、春と秋に咲くんだけど、狂い咲くような満開にはならずポツポツと花をつけるらしい。へ~~
ここで一句。
「へんろ道 凛と背な押す 冬桜」
可憐な花に力をもらい、リスタート。
雲がはれ、澄んだ青空が広がる

愛媛最後の札所であり、遍路道の最高標高となる雲辺寺へアタック開始!



斜度が更に急になる

犬の散歩用かな~と思ったら

「この付近で大便をしないで下さい」って、まさかの人向け!

まー、確かに開放的な場所ではあるけれど...

トレイル脇には自転車が!ここまで持ってくる方が大変じゃない?

久しぶりに汗をかく登り



すると、下ってくるお遍路さんがいたので嬉しくなって立ち止まり、少し会話。曰く、頂上付近は雪が凍ってツルツルだから気をつけて、とのこと。
マジか...。
うぉ!来たか!?

セーフ♪

来たか!?

いや、セーフ♪

今度こそ来たか!?

やっぱりセーフ♪

なーんてやってたら着いちゃったw

12:36 愛媛最後の札所 66番 雲辺寺

最高標高の札所だけあってロープウェーでも上がって来れる。当然、俺には関係ないけど...

五百羅漢像。一体一体、本当にリアルかつ表情が違うので、思わず、ずっと見ちゃう。

でも先は長いので、下山開始。まだ気を緩めるのは早い。

トレイルの入口にシェアリングストックがあったので、ありがたく使わせてもらう


雪の柔らかい箇所を狙って慎重に下っていく

徐々に雪が無くなり

とうとう香川に入ったー!

ここまで来れば一安心♪

休憩&補給がてら宿探し。

宿泊予定エリアの観音寺周辺は宿が密集していて、最初に電話したホテルがあっさり予約出来た♪
しかも恒例となったステージコンプリートのお祝いをすべく、近場でお勧めの飲食店を聞くと、なんとレストランが併設されているという!やったぜ!!
そうと決まればとっとと行こう!
15:11 香川最初の札所 67番 大興寺

生ビールの引力に惹かれてラストスパート!


17:02 観音寺駅

17:03 本日のお宿、ホテルサニーインにチェックイン

部屋も広々~

でもドテッとするのはまだ早い
大急ぎでシャワーを浴びて、併設の郷土料理店「骨付き鳥 観音寺」に小走りで突入!

念願の生ビール!!五臓六腑に染み渡る美味さ

おかわりは、香川名物でお店の屋号にもなっている骨付き鳥と共に。あ~幸せ...

満ち足りた気持ちで部屋に戻り、念入りにアイシングしながら、明日のルート(とうどん屋w)を確認する。

いよいよめくるページの方が薄くなってきた地図に、最後の道場に入った喜びがジワジワと込み上げる。
と、同時にお気に入りの本を読み終えてしまうような寂しさも。
期待と不安、達成感と寂寥感。
不意に湧き上がったアンビバレントな想いは、どんどん振れ幅を大きくする。
そして感情の振り子は時間軸にも及ぶ。
夜はいつも明けたし、雨は虹をかけた。
全ての事が繋がっているのなら、この物語はどんな結末に向かっているんだろう。
そもそもこのお遍路自体が人生のプロセスだとしたら...?
暴走し始めた思考は、結局着地点を見つけられないまま、いつの間にか眠っていた。
参拝 65番~67番、距離53.7km

いよいよ旅の終わりが、始まった...。
- 2021/02/11(木) 11:06:50|
- お遍路
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「菩提」
煩悩を断ち切って悟りの境地に達すること。
1/12(十一日目)愛媛には大雪注意報が発令...

4:10 冷たい雨の中、出発

今日の目標は65km先の43番 赤石寺まで打つこと そうすれば明日が楽になる。
ところが歩き始めてすぐに今まで無事だった左足首がズキズキし始める。
マジか...。右足を庇うためにサコッシュを左に垂らすようにしたら、右足が回復するより先に、左足に痛みが出ちゃった...。
ルートを確認すると10km先から標高500mの山登り。まだ暗い中、雨のトレイルにこの足で突っ込むのは嫌なので、峠は巻いて国道を進むことに。
歩行者専用トンネルがありがたい

雨はなかなか降り止まない

ただRUSHには専用のザックカバーが付いているので安心

川で沢山のカモが休んでいたので写真を撮ろうとしたら、一斉に飛び立っちゃった。
何かゴメン...

松尾トンネルは長くて排気ガスが充満するため、黄色本では遍路道で巻くことを推奨されていたけど、少しでも距離が短いほうが良いと思ってしまい、突っ込む。

ところがトンネルの出口が残雪でツルツルに凍っていて大後悔...

宇和島市街に近づくにつれて晴れてきた!


11:38 宇和島

すっかり晴れた!

13:20 41番 龍光寺

14:14 42番 仏木寺

ここまで行程的には計画どおり。ただ凍った道で滑るたびに腫れ上がった両足に負担がかかかるため、そろそろ足からの悲鳴が無視できなくなってきた。
次の明石寺までは10.6km、門限まで残り3時間弱。全部歩いても間に合うはず。悲鳴には耳をふさいで歩き出す。
ところが、ルート上の歯長峠が、残雪が凍っていることに加え、2018年の豪雨の影響でかなり荒れていて大苦戦...
シャーベット状に凍った残雪を滑り

崩落箇所を巻き

倒木を乗り越えて、必死で進んでいく

途中、滑って転んだ拍子にバンジーコードに挟んでいた参拝グッズをトレイルにぶちまけてしまう。焦りと足の痛みで、もう泣きそう...
ロードだ!!!
嬉しくて思わず歓声をあげる。

あと6km、残り時間は1時間。
急げ!急げー!!
16:55 43番 明石寺

納経所に駆け込み、参拝はこれからすることを告げて、御朱印を頂く。
ふ~、間に合った...
参拝を終えた途端、足の痛みと、間に合った安堵感で座り込む。
運ちゃんの黒飴を舐めながら10分ほど休憩したら何とか動けるようになったため、1kmほど離れた今日の宿 ビジネスホテルOOKIに向けて歩き出す。
もはや俺にとって運ちゃんの黒飴は仙豆w
Googleマップで確認したホテルの場所に着いたはずなのに、探せど探せどそれらしい建物が無い。諦めて電話してみると、どうやら元駐車場の場所が表示されてしまっているらしい。電話越しに、視点を定めないまま右、左を伝えるフロントのおばちゃんと、疲労で理解力が全く無くなっている俺の会話はなかなか噛み合わず、同じ道を何度も行ったり来たり...
17:40 何とかビジネスホテルOOKIにチェックイン。フロントのある2階の窓から、おばちゃんが嬉しそうに手を振って迎えてくれた。

宿帳の住所に「東京」と書いた瞬間、恐る恐るおばちゃんの顔を伺ってしまう。でもおばちゃんは何も気にしていないようにニコニコしたまま。ホッと一安心。
連日の酷使に猛抗議してくる足をダブルアイシングで黙らせ、20:00頃就寝。


参拝 41番~43番、距離 65.4km
1/13(十二日目)6:00 フロントからの内線電話で目を覚ます。
今日は4:00に起きて5:00に出る予定で、おばちゃんにもそう伝えていた。早いので見送りはいい、と言ったんだけど起きて待っていてくれたようで、一向に降りてこない俺を心配して電話をくれたらしい。
「すいません、ありがとうございます!」慌てて飛び起き、バタバタと身支度を整えてフロントに向かう。待たせてしまったことをお詫びすると「ゆっくり休めたようで良かった。こんな時期にわざわざ東京から来てくれてるんだから、無理しないで気をつけてお参りしてね。」とミカンを二つ持たせてくれた。おばちゃん、やっぱり気づいてたんだ...。
6:30 出発。

しばらく行って振り返ると、案の定、2階の窓から、おばちゃんが笑顔で手を振っている。俺も大きく手を振り返し、もう一度頭を下げて、歩き出す。
天気予報によれば、やっと寒波が抜け、今日から天気は回復するらしい

通学中の子供たちとすれ違うと、皆、必ず「おはようございまーす!」とハツラツと挨拶してくれる。
君たちはきっと知らないだろう。それがこのボロボロのおじさんをどれだけ元気づけているかを。

7:51 コンビニのイートインでおばちゃんにもらったミカンを食べつつ、今日の行動予定を再検討。

次の札所44番 大寶寺までは約70km。周囲には宿やコンビニもある。なので参拝は出来ないまでも、今日のうちに辿り着いておく予定で昨日は頑張ったし、今日も早出の予定だった。ところが出発時刻が大幅に遅れてしまった。これは今日も行けるところまで行って野宿かな...。
昨日のトラウマから、遍路道の鳥坂峠を避け、並行している国道を進むことにしたんだけど、これが大失敗。
歩行者がほとんど通らない国道沿いの残雪は完全に凍っていて、スケートリンクの上を歩いているよう。

トンネル内の歩道は狭く、横を大型トラックがビュンビュン通り過ぎていく。

精神的にも体力的にもガッツリと削られる
絶景の休憩所でホッと一息。

ここで、ふと靴底を見ると、何とソールが完全に磨り減り、ほとんどグリップしていない。まー、ここまで既に700km近く来ているし、特にここ数日は完全に足を引きずってたからな...。次の大洲の街まで行けば、靴屋もありそう。出来ればそこで新調しよう。
引き続き残雪と車道のキワを慎重に進んでいく

やっと下界に降りてきた。ここまでくれば一安心。

11:29 伊予大洲の駅前で、期待どおりのスポーツショップを発見!

中に入ると、石田ゆり子が10歳くらい年をとった感じの、品の良いおばさまが迎えてくれる。
「あら、お遍路?」
「はい、ちょっと靴がスり減っちゃって...」
「私も、2回くらい廻ってるのよ。私の場合はバスのツアーだったから、ほとんど歩いてはいないんだけど。ウフフ♪」
早速、ウェットティッシュで足を拭き、靴下を履き替えた上で、片っ端から試し履き。
「靴は大事よね~。うちにも足が痛くなった歩きお遍路さんが、靴を買い代えに来るのよ。ウフフ♪」
楽しそうに話しながらも、おばさまはどんどん靴を出して俺の前に置いていく。
「八十八箇所のあとは、別格二十霊場も廻ったのよ。もちろんバスツアーだけど。ウフフ♪」
おばさまの声をBGMに履き続け、何足目かのミズノがちょうど良い感じ!しかもセール品♪
ちなみに普段、俺は25.5cmなんだけど、腫れと浮腫みで1cmも大きくなってた。

早速お会計。すると「お接待で7,000円にさせて頂くわ。頑張ってね。ウフフ♪」と。しかもボロボロに汚れた古い靴まで引き取って頂いちゃった。
ビフォー

アフター!

アシンメトリーな色使いもいい感じ♪

新しいソールで乾いた舗装路を進む。

郊外型の大店舗たちが並ぶ。歩き遍路にとっては貴重な補給エリア。

何だか心も晴れてきた。

自分と同じ名前って反応しちゃうよねw

久しぶりの乾いたトレイルが気持ち良い

14:41 道の駅内のうどん屋さん。中を覗くと(俺にとっては)幸いお客さんはいなかったため、ここで昼食。

温かいうどんが染みる

今日は「行けるところまで行って野宿」作戦。とは言え、そろそろ野営地の目処はつけておきたい。
矛盾するようで不思議なんだけど、気分が晴れたら、何だか今日は無理せず早めに休んでも良いかな~という気持ちになってきた。
地図で6kmほど先の休憩所にアテをつける。側に小さい商店もあるので、開いていれば食料も調達できそう。
と、そこから数100m離れたところに「大瀬の館」という元村役場を改修した施設がある。ネットで調べると2階は宿泊施設になっているらしい。ダメもとで事務局を務めている個人の携帯っぽい番号に電話してみると「昨年から休館しているけど、念のため管理人に聞いて、折り返します。」とのこと。
方向性は決まったので、万が一に備え、道の駅で非常食になりそうなお米のお菓子を買って歩き出す。
5分ほどで事務局の方から折り返しがくる。ドキドキしながら電話に出ると、なんと管理人の方が、俺のために昨年から閉めていた施設を開けてくれるとのこと!ありがたい!!
16:39 大瀬の館

ちなみに大瀬の館に泊まれなかった時はこちらのお宿になるはずだったw

1階の交流プラザは引き続き休業中

2階の宿泊部屋。こたつ!!

Wi-Fi完備

冷蔵庫にはアイシング用の氷

この村は大江健三郎さんの出身地らしい。本棚があったのでラインナップを確認すると

大江作品はもちろんなんだけど、何故か赤川次郎さんが超充実

近隣の商店はバッチリ開いていた。そればかりか酒屋さんもあった♪


びっくりするほど完成度の高い宿泊施設に出会えたことに感謝しつつ、高校生の昼食みたいな晩ご飯でお腹を満たして、20:00頃就寝。

参拝 無し、距離 40.5km
1/14(十三日目)今日は標高500~800mのアップダウンを繰り返す久万高原に入る。抜けるための総距離は約60km。

出来れば一気に越えるべく未明の4:00出発

ジリジリと標高を上げていく

雪が出てきた

氷柱が寒々しい

ニューシューズは雪面をよくグリップし、昨日までより格段に歩きやすい


9:25 鴇田峠を越える

ここから一旦久万高原の町へ下る

町が見えた

札所の場所を確認しようとスマホを見ると、母親から着歴がある。すわ何事かと折り返すと、息子がお遍路に行くといったきり何の連絡も寄こさない上に、四国に大雪が降ったというニュースを見て、心配でいてもたってもいられなくなってしまったらしい...。
「大丈夫だから!とにかく大丈夫だから!今回は日本だから!」と、我ながらピントのずれた理由で無事を説明。その後もご飯は食べてるのか、泊まるところはあるのか、とマシンガンのように繰り出される質問を何とかなだめて切電。世間的にはアラフィフのおっさんでも、母親からすれば、いつまでたっても小さな子供のイメージなんだろう。
そして電話を切った後に、もう少し丁寧に応えてあげれば良かった、と後悔する息子あるある。
10:56 44番 大寳寺

続いて岩屋寺へ再び標高を上げていく


12:59 八丁坂は、古来、修行のために使われたという急登

ふう...

14:13 45番 岩屋寺

境内もなかなかのアップダウン

暗くなる前に峠道を抜けるべく、急いで下り始める


するとイメージよりも随分早く林道に出る。ちょうど軽トラの脇で休憩中のおじさんがいたので道を聞くと「そりゃ、降りすぎじゃ~、遍路道はもっと上じゃ~」と。
そして先導するようにズンズンと俺が来た道を登り返し始める。

「どっから来たんじゃ~?」
「はい、今日は、大瀬の、町から、ゼェ、ゼェ...」
「それはご苦労じゃったの~。ほいでどこまで行くんじゃ~?」
「はい、出来れば、46番まで、降りてしまいたいと、ハァ、ハァ...」
おじさん早い!息を切らして必死でついていく
「ほれ、ここが分岐じゃ。まだ国道までは、大分あるからの~。気をつけて行くんよ~。」
「はい、ゼェゼェ、本当に、ハァハァ、ありがとうございます!」
16:58 夕暮れから逃げるように降っていく

17:12 何とかロードまで降りてこれた!

ここまで来れば一安心。ポッドキャストを聞きながら暗闇を淡々と進んでいく。
スキー場!そりゃ寒いよね...

18:46 松山市に入る

最後のピーク三坂峠を越える

街の灯りが見えた

21:15 浄瑠璃寺に到着 長かった~

近くの公園に移動して、コソコソ設営。

残念ながら近隣に食料を調達できるお店は無かったので、行動食で慎ましく晩ご飯。

野宿ならではの開放感と少しの心細さを噛み締めつつ、22:30頃就寝
参拝 44番~45番、距離 61.8km
1/15(十四日目)6:45 起床。幸い、ラジオ体操や犬に吠えられて起きることも無く朝までグッスリ。
サクッと撤収。

7:14 46番 浄瑠璃寺

佛の足跡を踏んで、健脚を願う。

7:41 47番 八坂寺

ここで数日前から考えていた秘策「荷物切り離し作戦」を決行することにして、コンビニからテントとシュラフを宅配便で自宅に送ってしまう。


そもそも今回、旅の装備として野宿セットを持ったのは、コロナ禍により宿に泊まれなかった場合のバックアップとして。ここまで旅を続けて、宿が営業していなかったり、満室だったことはあったけど、全く泊まる場所がないことは無かった。2度のテン泊も俺の行程と宿泊施設の場所が合わなかっただけで、逆に言えば宿の場所を前提に行程が組めれば、野宿の心配は無いということになる。地図を見ると、ここからはそれなりの密度で市街地が続くため、宿泊場所に困ることは無さそう。であれば痛む足の負担を少しでも減らすためにも、荷物は軽い方が良い。
美しい山なみを眺めながら進む。いやー、軽いって自由♪

9:14 48番 西林寺

住宅街を抜け、近接する札所を繋ぎながら市街地へ

10:12 49番 浄土寺

10:47 50番 繁多寺

12:09 51番 石手寺

今回のお遍路中、俺と同じ歩き遍路の方に会ったのは、ここまでお二人。その他の手段の方や参拝の方も決して多くは無かったため、各札所の納経所は常にガラガラで基本的に待つことはなかった。でも、この石手寺はメジャー観光地の道後温泉が近いことや、納経所が購買所を兼ねていることもあって10分ほど待つことに。SDに配慮しながらも、久しぶりの行列にちょっとテンションが上がる。
12:39 道後温泉

ここで温泉入って明るいうちからビール飲んだら最高なんだろうな~
ただ残念ながら、ここ松山は、前述の愛媛独自の特別警戒宣言の原因となった感染拡大が発生した地域の一つ。メインストリートも閑散とし、コンビニまでもが営業を中止しているため、ここは浮ついた気持ちをグッと抑えて、静かに通り抜ける。





今日はローテーション的に洗濯デー。距離や時間を逆算して宿泊エリアの目処をつけ、間違いなく洗濯設備のありそうなユースホステルに連絡。お遍路、素泊まり、一人であることに加え、念のため東京からであることも伝えると「全く構わないし、むしろこんな時期に有難い!」と嬉しい反応。
やはりテントが無くても何とかなりそう。
久しぶりに気温が10°を超えた!

14:17 52番 太山寺

15:02 53番 圓明寺

遍路道は再び気持ち良い海岸線へ


17:08 北条海軍ユースホステル

ユースホステルというと、勝手なイメージで無機質でシンプルな建物を想像してたんだけど、完全に普通の家。気づかず何度も建物の前を行ったり来たりしちゃった。
チェックイン時に宿の親父さんが言うには、コロナ禍で1月の予約はほぼ全てキャンセルになってしまい、俺が今年最初のお客さんとのこと。
部屋も完全に実家。いや~、落ち着く。

洗濯物を片付け、明日以降の宿泊場所に何となくの目安をつけて、20:00頃就寝。

距離 46番~53番、距離 35.3km

こんな時に始めた旅だけど、こんな時だからこそ続けたい。何だかそう思えるようになってきた...。
- 2021/02/07(日) 13:53:17|
- お遍路
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